派遣で回ってきた葬儀屋の仕事、貴重&懲りごりな経験

登録派遣のアルバイトは、引っ越し作業やトラック荷降ろし作業、工事現場の重量物運びなど、大体キツイ肉体労働と相場がきまっているのですが、閑散期などに大変変わった仕事が回ってくることがあります。
私の場合も幾つかありますが、休日の早朝に突然派遣事務所から電話がかかってきて、「礼服ありますか?あれば宝塚市の葬儀屋に緊急で向かってほしいのですが」と言われた時には本当に驚きました。

派遣登録時は金銭に困っていたのでとりあえず向かいましたが、全くのド素人、不安と困惑で一杯でした。
葬儀屋の社員さんからは「突然欠員が出たので手伝ってほしい、まずは会場前で遺族関係者皆さんに挨拶するだけでいい」と言われました。なんだ、これなら楽だな、と思っていた私の目に、公民館前ではしゃぐ幼い姉弟らしき二人の子供が飛び込んできました。

「亡くなったのはあの子たちのお父さんなんだよ。その前にお母さんも亡くなってる。
あの2人はまだわかってないんだよ…」と葬儀屋の人がこそっと教えてくれました。

私は一気に気持ちが重くなり、引き受けたことを激しく後悔しました。
その後もほとんど式を立って見ているだけで、私は特にすることがなく、気は重いけどこのまま帰れたらまあ楽な仕事だな…と思っていました。しかし本当に大変なのはここからでした。

遺族の方が各車に分かれて斎場へ向かうのですが、その間に昼食の準備をするのです。
車が全て出払った後、葬儀屋さんたちの表情が明らかに変わりました。

かなりの大きな部屋で、限られた時間で一気に模様替えをするのです。葬式幕はがし、イス・テーブル
並べ、配膳…年配の社員から若い女性社員まで、とにかくものすごいスピードで、私は式の進行よりこの時に彼らのプロフェッショナルを感じました。驚いたのは、葬式幕をバリバリ剥がして床に画鋲が散乱するのですが、彼らはそれをものともせせずひょいひょい避けてスピード作業を保っているのです。
私も負けじと重いもの優先でどんどん運んだのですが、何度も画鋲を靴下の上から踏んでしまい、非常に痛い作業でした。
辛い重労働はこれまで何度もありましたが、この時は本当に泣きそうになりました。

無事遺族の方が帰ってくる時間には全ての準備が整い、その後は何事も無く式は終了しました。
これで帰れると思ったら、葬儀屋の方に「この後洗車を手伝ってほしい」と言われ、葬儀屋のガレージで2月の寒い中ハイエースの掃除をしました。普段ならなんてことない作業ですが、ぐったりしてしまいました。

玄関に塩を撒くようにと言われパックの塩をもらい、仕事は終了しました。派遣仕事は嫌がらず何でも引き受けるのが基本ですが、特殊なプロの専門現場に飛び入りで参加するのはもう懲りごりだと思いました。