葬儀用の服や靴は定期的にチェックした方が良いですよ

これは私ではなく、私の父が当事者となった話です。

父は普段は工事現場で働く職人なので、スーツや革靴を身に付ける機会はほぼありません。
それこそそれを身に付けるのは、結婚式や葬式などの冠婚葬祭だけ。なので、普段は全くチェックしないでタンスや靴箱の奥深くに仕舞われているんですよね。

さてそんな父ですが、私の母方の叔父、つまり父からすると義兄が亡くなって通夜と葬式に出席することになった時の話です。

生前、父は義兄に大変世話になったらしく、訃報を聞くと母とともにすぐさま家を出て行きました。道中の父は珍しく涙ぐみ、義兄との思い出に浸っていたようです。

そんな姿を見た母も、義兄と父のしっかりとした絆に思わず涙涙だったそうです。

こうして葬儀会場へと到着すると、さっそく叔父の亡骸と対面し沈痛な面持ちのまま通夜へと出席。この日は滞りなく終了して、翌日の葬儀へと移ることになりました。

そして翌日になり、改めて喪服と革靴を着て葬儀に出席。今にも泣きそうな想いのまま式は進んで行ったそうなのですが、事件は焼香の時に起こります。

親戚として父と母が焼香をあげようと離席した瞬間、父曰く「足がガクッとなった」と言うのです。
思わず何事か足元を見ると、そこには黒い物体が落ちています。

何だろうと思って目を凝らすと、それは何と革靴底にあるかかと部分だったのです。
それでも流れを止めるわけにはいかずに焼香をしようと歩くのですが、かかと部分が無い革靴は想像以上に歩きにくいらしく……。

不自然な歩き方に他の出席者の方も気が付き、そしてかかと部分の取れた不格好な革靴を履いて悪戦苦闘する父を見て失笑が漏れる始末。

悲しみに包まれるはずの葬儀で、何故か父が笑いものになってしまうというありえない失態を演じてしまいました。
葬儀後に父は「ちゃんとチェックしないとダメだな!」と嘆いていましたが、一方で冗談好きの叔父が父にいたずらを仕掛けたのかなとも思ってしまいます。

何にしても、冠婚葬祭用の服飾は定期的にチェックした方が良さそうですね。