花と音楽が好きな友人の為の自由葬

私の友人は子供の頃から体が弱く、それでも懸命に生きました。
しかし20代を過ぎた辺りから調子が悪くなってしまって、入退院を繰り返していたのです。
友人は花と音楽が大好きで、いつか美しい花と綺麗な音楽に囲まれた喫茶店を開く事が夢でした。
でもその夢は叶わないまま、友人は病気が元で亡くなってしまったのです。

友人は生前、ご両親に「好きな花と音楽を、葬儀の場で用意してほしい」とお願いしていたようでした。
知らせを受けて通夜へ向かうと、会場が綺麗な白い花で埋まっていたのです。

菊、百合が主でしたが、よく見ると可憐なマーガレット、カスミソウもありました。
とてもいい香りが漂っていて、ここが通夜の席という事もついつい忘れてしまう程だったのです。

そして友人の好きだった音楽もかかっていました。
静かで幻想的なピアノの音が微かに聴こえてきて、花の雰囲気と相まってまるでそこは天国の花畑のようでした。

着席し、黙祷を捧げるとご両親が前に立ち挨拶をされました。
そして娘の希望した自由葬ですので、どうぞ娘の話しをしましょうと言ったのです。
他の通夜ですと、例えば仏教ならお坊さんが出てくる事があります。
しかし自由葬とはこういった様子で進むのか、ととても新鮮でした。

ご両親を囲み、友人の想い出話をしていると、何だか心がスッと落ち着いてくるのが判りました。
葬儀は故人の為だけではなく、その家族や周りの者の心を救う意味もあるのだと思います。

s_010それから最後に眠っている友人の棺の中へ、参列者が1本1本白い花を入れました。
エンバーミングされていて、生前よりも血色のいい頬に思わずうるっときてしまいました。

花を手向け、そして控室で食事を摂り帰りました。
あんなに心の落ち着く葬儀は、初めてかもしれません。
葬儀は暗く、別れのイメージがありました。
しかし別れは別れでも、明るく見送る事が出来たような気がします。

告別式はご家族のみで行われるようでした。
あのような通夜に参列できてよかったです。